今月の本: |
『壁』(安部公房) |
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実施日時: |
2016年12月10日(土)14:00〜17:00 |
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今月の会場: |
サンライフ練馬 第二和室 |
参加費 : |
250円(会場費・資料コピー代に補填します) |
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懇親会 : |
終了後希望者で懇親会を行います(会費2500円程度) |
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今月は安部公房氏の作品を取り上げます。
『壁』は昭和26年6月に刊行された作品で、三部構成になっています。
第1部は「S・カルマ氏の犯罪」。
ある朝、目を覚ますと自分の名前を想い出せない。
当初は何かの理由で失念してしまったのかと思った「ぼく」だったが「名刺」に名前を盗まれたことが判明する。
作品は冒頭から実に不思議な展開になります。
「名刺」は何事もなかったかのように「ぼく」に入れ替わっている。
回りの人間たちもそのことに疑問を持っていないようだ。
「ぼく」は名前を失ったことで異常な体験を続ける。
心で強く思うとそのことを自分の想像の意識の中に吸収してしまうことを知る。
そして名前がないことで裁判の被告になってしまう。
話の展開は次第に形而上的と言える状態に...。
第2部は「バベルの塔の狸」。
次の主人公「ぼく」は、名前ではなく「影」を奇妙な動物に咥えられて持ちされてしまう。
影を失ったことで「ぼく」は影の元である身体そのものも消えて透明人間になってしまった。「ぼく」は元の身体を復元させようと様々と試みる。
そして「とらぬ狸」なるものが...。
第3部は「赤い繭」。
前年の昭和25年に発表した短編作品が4つ並びます。
安部公房はこの三部構成の作品を通して何を語っているのでしょうか。
安部公房の作品としては『砂の女』が有名ですが、『壁』は安部公房の精神世界に迫るためにもぜひ読んでいただきたい一書です。
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