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雨水は持続可能な社会への突破口

新鮮な水 ―― 
それは空気と同様
人間の生存に欠かせない
水の問題は最も重要だ
水なしで生命は生存しえない
しかし新鮮な水の供給源は
危機的状況にあり ――
現状が続けば2025年までに
全人口の3分の2が
水不足に直面すると
予測されている・・・
いま、なぜ雨水なのか
なぜ雨水に取り組もうとするのか。
このページでは、それを述べなくてはならない。
しかし、それは少し長くなる。
「持続可能な社会の構築」という視点から、話を始めたい。
環境問題が地球上のすべての生命を脅かす時代
環境問題が地球上のすべての生命を脅かす地球的問題群として認識された20世紀。
その解決の糸口さえ見出せないまま、人類は21世紀を迎えた。
『持続可能な未来』をいかに構築するか。
人類は今、重く、そして絶対に負けることのできない、大きな課題に挑もうとしている。
いくつかを列挙してみる。

人口の急激な増加
人口がきわめて急速に増大している。
すでに人問で溢れている地球は、最も楽観的な予測でも、21世紀中に2倍の人□を維持しなければならなくなる。
環境に危害を加える原因は様々あるが、人口増加はそのすべての原因を悪化させる。

自然資源消費の加速度的増大
過去20~30年問、自然資源の消費が加速度的に増大している。 その消費はしばしば非効率的であり、計画自体に誤りがある。 生物学者が再生可能と呼ぶ資源は、再生に必要な時間を与えられていない。
その結果、人類は地球の元本をますます食いつぶし、その利息を減らしている。
これは、賢明なやり方ではない。
人口増加と資源消費による環境の悪化
人口の増加と資源の無駄遣いの両方が、多くの面で環境の悪化を加速させている。 地球上でも生産性に富む地域が最も大きな打撃を受けている。
豊富な農産物を生む乾燥地が砂漠に変わり、 森がやせた牧草地に、 淡水の湿地が塩分を含んだ不毛の土地に、 豊かな珊瑚礁の海が生物の住めない沈黙の海に、変わっている。

生物多様性と遺伝子資源の喪失
生態系の劣化により、生物の多様性と遺伝子資源が失われている。 他の多くの環境変化の流れは逆戻り可能だが、この損失は取り戻すことができない。

大気水質土壌の汚染
こうした資源の乱用は大気、水、土壌の汚染をともなう。 汚染物質は、多くの場合、長期にわたって残留することになる。
汚染の発生源と種類が増えたことにより、この過程もまた加速化しているように思われる。 これらの脅威の最も複雑で潜在的に重大な問題は、気候および大気循環システムの安定が乱されることである。

主に危惧されるものを挙げても上記のようにいくつもある。
増加する人口に対処することが、持続可能な社会のキーポイント
また「開発」のパターンにも警戒すべき傾向が見られる。 これは人口の問題が大きな意味をもっている。
人口増加の90パーセント以上は開発途上地域で発生。 現在60億人を超える世界人口が、21世紀前半に倍増し、雇用、食糧、安心して住める家、教育、医療を確保することが最も困難な国々において、45億の人問が増えることを意味している。

人口増加は、十分な衣食住や医療、教育などの生活の基本的なものを確保できない人々の数を、開発途上地域で年々増加させている。

1980年代半ばには、地球上の10億人以上の人々、つまり開発途上地域の人口のほぼ3分の1が、一日当たり約1ドルという収入で暮らしていた。
貧困、急激な人口増加、自然資源の低下はしばしば同一地域で発生しており、裕福な先進国に住む地球人口の4分の1と、発展途上国に住む残り4分の3の間にとても大きな不均衡を生んでいる。

日本の1億2000万人の国民所得は、開発途上地域の38億人の総所得を今にも追い越そうとしている。
先進国は総体的に開発途上地域への援助を削減、債務返済や外国投資の減少のために、全体的な資本の流れは1980年代後半に逆転し、金は貧しい地域から富める地域へと流れている。

環境と開発という、二つの分野に見られるこれらの警戒すべき傾向は、切り離すことはできない。
大部分の開発途上地域における経済成長は、しばらくは農業生産に依存することになるため、生態系における生産性の低下は、農業生産の減少と収入の喪失を招く傾向と直結する。

しかし、停滞する経済の中での人口増加は、生活のために環境資源基盤に直接依存する人々が増加することを意味する。
環境と経済の悪化は、分かちがたく結びついて、一つの悪循環を生み出している。

私たちは、人類とその他の全ての種が安全で豊かな地球に住み続けることができるために、今後生まれてくる子孫たちのために、いま、自分がいる場所で何ができるのか、その具体的方策を求められている。
持続可能な社会実現への取り組みの歴史
1960年代末から1970年代初頭にかけて起きた環境問題の最初の大きな波では、問題の多くは部分的なもの、つまり個々の工場などの排水口や煙突の問題であると思われていた。
これらの汚染源を規制することが抜本的解決策であるように思われていた。

1980年代に環境が政治問題として再浮上してきた時、主要な関心事は酸性雨、オゾン層の減少、地球温暖化など国際的なものになっており、研究者たちはその原因を排水口や煙突にではなく、はじめて、人問活動の本質に求めたのである。

人類の行為の大部分、人類が「進歩」するための試みの多くはまったく持続不可能であると結論する報告書が次から次へと発表された。
その主な論調は「われわれは現在の方法では、エネルギーを利用し、森林を管理し、農業を行い、植物と動物の種を保護し、都市の成長を管理し、工業製品を生産し続けることはできない。われわれは問違いなく現在のぺースで人類を再生産し続けることはできない」というものだった。

エネルギーは現在の持続不可能性を示す顕著な例である。
今日まで多くのエネルギーは石炭、石油、ガスなどの化石燃料からつくられてきた。
1980年代半ばには、世界では石炭換算で年問100億トンが燃やされ、先進国の人々が開発途上地域の人々よりずっと多くを利用していた。

このままでいくと、2025年には推定80億人以上の地球人口が石炭換算で140億トンを利用することになる。
もし全世界が先進国の水準でエネルギーを利用するとしたら、2025年には550億トン相当が燃やされることになる。
現在の水準でも、化石燃料の利用は確実に地球を温暖化させている。
地球の気候を根底から変えることなく、経済発展を達成しようとするのであれば、代替燃料の開発を進めながら、化石燃料のより効率的な利用を図らなくてはならない。
「持続可能な開発」は時代の趨勢
持続不可能性を示す証拠がこのように広範囲にわたっていることを考えれば、「持続可能な開発」という概念が環境と開発に関するあらゆる議論に登場するようになったのも当然の流れだろう。
1987年、国連総会でその3年前に任命された、グロ・ハルム・ブルントラント・ノルウェー首相が委員長を務める環境と開発に関する世界委員会(WCED)(1984年の国連総会で設立された通称ブルントラント委員会)は、持続可能な開発を、その全体報告書『われら共通の未来』(邦訳名『地球の未来を守るために』)のテーマにした。

同報告書は、この概念を、「将来の世代が白分たちの二ーズを満たす能力を損なうことなく現在の二ーズを満たす」開発または進歩の形態であると簡潔に定義している。

開発という言葉が「開発途上」国だけの仕事を連想させるかもしれないが、開発という言葉には、成長すなわち「量」的な変化よりももっと重要な意味がある。

それは「質」の変化だ。
今から20年以上前に、国連と各国政府や民問団体を代表する組織が策定した世界自然保全戦略は、開発を、「人類の二ーズを満たし、人類の生活の質を向上させるための生物圏の修正と、人的、財政的、生物的、非生物的資源の利用」と定義している。

この視点で考えれば、すべての国が開発途上国である。
あるいは開発途上国でありたいと望むだろう。
そして持続可能な開発は、最も多くの資源を消費し、最も多くの汚染物質を放ち、そして必要な変革を行う最も大きな能力をもっている最も裕福な国々において、最も大きな変革が行われることを要求している。
これらの国々先進国は二ーズと生産の順序を逆転させようとしているという、世界の貧しい国々の指導者から寄せられている批判に応えなくてはならない。
裕福な国々における生産の増大は本質的にもはや二ーズを満たすことに役立っておらず、むしろ二ーズの創出によって生産が増大しているという非難に対して。
会議体しか動かない運動には、限界がある。
このように、人類が進歩の名において為されてきたことの多くは、持続不可能な行為であり、変えなくてはならないという考えは急速に支持されてきている。
1987年に国連総会は、WCEDの報告書を将来の国連活動の指針として採用し、これを各国政府に勧告する決議を採択した。
それ以来、多くの国の政府が政策をこの勧告に近づけようと努力している。

このような地球的課題を解決するため、1972年以降、国連を舞台にして10年ごとに環境と開発をテーマにした世界会議が開かれてきた。
1972年 国連人間環境会議(ストックホルム会議)
1982年 国連環境計画管理理事会特別会合(ナイロビ会議)
1992年 国連環境開発会議(リオデジャネイロ地球サミット)
2002年 持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルク環境開発サミット)
しかしそのいずれも、特目すべき成果は得られていない。

広範な環境破壊に対し 多くの人は無力感を感じる。
貧困、飢え、難民、大量虐殺用の兵器・・・地球はいま確かに危機的な状況にある。
しかし人間と環境を守るために尽くしてきた人々は ――
悲観的ではなく、まだ希望はあると言う。
すべては各自が今いる場所で起こす行動にかかっていると ――

「貢献は誰にでもできます ただ形に気をとられ ――
どこにいても貢献できることを忘れているのです」
(生物学教授 ケニアグリーンベルト運動指導者・ワンガリ・マータイ)
人の生命を支えるもの、それは空気と水。
1970年代以降、国際社会の環境問題に対する関心が高まり、1977年に国連で初めての水会議が開催された。
1987年に「持続可能な開発」を世界に提言した国連の報告書の中で、水問題が国際的問題として取り上げられた。

その後1992年1月に、水と環境について広く議論を行ったダブリン会議が開催され、さらに1992年6月ブラジルのリオデジャネイロで開催された「地球サミット」において、淡水資源の確保が主張された。
1990年代には、頻発する干ばつや砂漠化、世界各地で発生する大水害、水質の汚染などの水問題に対する国際社会の取り組みが不十分とする認識が、世界的に広がった。
この頃から有限な水資源が誤って管理されているという認識も広がり、国連を中心とした取り組みだけでなく、世界の水問題の解決に向けて水関係のあらゆる分野の専門家、あらゆる水の利害関係者が共に活動する仕組みが求められてきた。

21世紀に入り、2002年8月に南アフリカ・ヨハネスブルクで開催された環境開発サミットでも主要テーマとなりましたが、具体的な進展を見るまでには至っていない。

現在の水問題に取り組む視点としては様々提起されている。
2003年3月に開催された世界水フォーラムでは
①水不足
②アクセスが困難な状態
③水質汚濁
④細分化された水管理体制
⑤資金源の減少
⑥政策決定における認識の不足
⑦世界の平和と安全保障の危機
といった7つの視点をもとに討議が行なわれた。
地球的課題と深く絡み合う、水問題。
ここでは水の課題を、次の7点にまとめてみる。
【1】水危機を招く人口増加
水や食糧不足、洪水による危険度の増加など、多くの水問題の大きな原因となっているのが急激な人口増加です。すでに60億人を突破した世界人口は、2025年には80億人に達すると見込まれることから、さらに深刻な事態が予想されてます。
【2】特定の地域に偏った水不足
人口の急増、産業の著しい発展によって水不足が増大しており、現在、アジア、アフリカなど31ヶ国で水の絶対的な不足に悩んでいます。 また、水不足が深刻な食料不足をもたらしている地域も拡がっています。
・水が原因で、年間500~1,000万人が死亡
・12億人が安全な飲料水の確保ができない。
・8億人(=世界人口15%)が1日2,000カロリー未満の栄養しか摂取できず
・30億人が十分な衛生設備を利用できない
・2025年には48ヶ国で水が不足する見込み
【3】水質汚濁
急激な人口増加や工業の発展などに伴い、下水道等の施設整備が追いつかない途上国を中心に著しい水質汚染が問題となっておりこの事態について国連は1998年に以下の報告をしています。
・途上国における病気の80%の原因は汚水
・水が原因とされる病気で、子供たちが8秒に一人ずつ死亡
・世界人口の50%に対し、下水道施設が未整備
・淡水魚の20%の種は、水の汚染により絶滅の危機
・内分秘かく乱物質等の有害物質による水の汚染
【4】地下水問題
増大する水需要への対応やポンプ等用水技術の進歩によって、過剰な地下水の汲み上げが行われ、これに伴う地下水位の低下、地盤沈下が世界各地で発生しています。地下水の影響は水循環全体に現れ、地下水の水質の悪化や河川流量の減少などによって生態系にまで及ぶ問題に発展しています。
・中国の穀物の約40%を生産する華北平原の大半の地域で地下水位が1年間に1~1.5mずつ低下
・現在のサウジアラビアにおける地下水使用量ベースを続ければ、2040年までに地下水資源が完全に枯渇
【5】洪水被害
都市化による急激な土地利用の変化や森林の伐採により、洪水時の流出量が増大するとともに、人口急増のために危険な氾濫区域に多くの人が居住するようになった結果、洪水による被害は大きくなっています。
【6】都市化と水問題
急激な人口増加は都市において特に顕著で、水供給に限界に直面した国々では都市の増大する水需要を満たすためにかんがい用水を転換利用したり、水資源開発施設を建設したりして都市周辺、あるいは遠方から都市に大量の水を集めています。
さらにこの水は都市において大量に消費されるとともに、大量の下水が発生します。 また、急激な都市化は、土地利用の変化に伴う流域保有能力の低下や、氾濫区域への居住地の進出を引き起こし、この結果、洪水被害が増大しています。
【7】水と温暖化
地球温暖化は気候に影響を与え、そして水の循環が洪水や渇水被害をより大きく、かつ頻発させる原因となると考えられており、世界の多くの地域に深刻な影響を与えています。
予想される海面上昇は、バングラデシュ、中国、エジプト、ナイジェリアのような、標高の低い沿岸地域に多くの人々が住んでいる地域で、大規模な氾濫が発生するのではないかという不安を与えています。
このように「水問題」は、様々な重要課題と深く関連している。
そのいずれもが緊急の課題である。
そして、その課題に共通した、解決のための突破口のひとつが、「雨水」である。
圧倒的に不足する淡水。偏在の現実。
私達が暮す地球の表面の70%以上は水に覆われている。
その水は地球の大気圏内で循環しながら全ての生命の源として生命を育み、動植物を育てている。
地球上の水の総量は約14億km3。
そのうち約97.5%は海水等、残りの2.5%が淡水である。
その淡水のほとんどが北極や南極の雪と氷、氷河などだ。
河川・湖沼として私たちが“使いやすい形での水”は、地球上の水のわずか0.01%にすぎない。
(注・これらの数字は発表している機関等によって若干の違いがある)

しかも淡水は北米、南米、東アジア地域に偏在しており、陸地の4割を占める乾燥地帯には、全体の2%しかないと言われている。
乾燥地帯に紛争が多発しているのも、水利権が大きく絡んでいると言われている。

世界の人口の4割が水不足に直面し、約11億人が安全な水を使えない。
汚水が原因とされる感染症で死亡する人の数は年間で500万人とされ、その数は年間戦死者の10倍。
先進国の水洗トイレで流される一回分の水と、途上地域での洗濯、飲み水、料理、清掃に使われる一人一日分の水がほぼ同量。

日本での一人一日あたりの水使用量は300リットル超。
発展途上地域では、家から歩いて1km以内で一日20リットル以上水が利用できれば良好な環境と言われている。
安全な水の確保は「貧困と飢餓」の克服のために欠かせない地球規模の課題である。

国連では淡水の重要性を認識して2003年を「国際淡水年」とした。
アナン国連事務総長は「開発途上地域で病気を減らし人命を救う最善の方策は、全ての人に安全な水と充分な衛生設備を届けることをおいて他にない」と語っている。

地球上の水の総量は変わらない。
しかもその水は、地球の大気圏内で完全循環している。
その循環のリングの中で、より多くの量を利用できるタイミングがある。
それは蒸発した水蒸気が冷やされて、地球表面に落下する瞬間。
雨、雪、雹などだ。
便宜上それらを「雨水(うすい・あまみず)」と総称する。
雨水の可能性。具体的に、できることから、はじめる。
今まで、そして現時点でも、淡水の確保となると雨が地上に落ちて川や湖沼に溜まった後の議論ばかりがなされている。
しかし、雨水として地球表面上に落ちる手前の状態は限りなくきれいなものだ。
ほとんどの地域ではそのまま飲むことができる。
また、灌漑や耕作にあたって、いったん川まで流れた水を再度くみ上げるよりも、その土地その土地で使う分だけ雨水を溜めることができれば・・・。
昔から各地で行われてきた「溜め池」を復活させ、グローバルに展開させることが重要になってくる。

水不足が深刻となっている地域の中には、降水量自体が圧倒的に少ない地域がある。
しかし大半の地域では雨水は降っている。
雨季乾季の差が激しい、
土壌に人に有害なヒ素等が含まれていて河川の水をそのまま飲むことができない、
土地が傾斜している、
地形が険しい、
土地が狭く海が迫っている 等の理由で結果として「淡水がない」状況が生まれている。
私たちの提案は大きく2つある。

ひとつめ。溜め池を作れる環境の地域には、溜め池をつくろう。
ふたつめ。溜め池を作れない環境の地域には、雨水タンクを設置しよう。
雨水タンクの重要性を訴える。
考えてみると溜め池がつくれる地域では昔からつくっていたはずだ。
淡水不足を解消するためには、溜め池がつくれない地域への具体的実行方策こそが重要であると私達は考えている。

以下、雨水タンクの実用性を中心に記述する。
タンクのタイプと使用エリア
私たちは雨水利用のセグメントを次の四小限で考えています。セグメントの要素は2つ。「設置方法によるタンクのタイプ」と「国内海外という使用エリア」です。
国内 海外
建造物併設型 雨水流出抑制・災害対応
(都市部向け)
雨水流出抑制・災害対応
(先進地域)
単独集水貯留型 災害・農業振興対応
(島嶼・山間部向け)
開発・産業振興対応
(発展途上地域)
この四小限にわけて、それぞれの視点で対応を進める。
※以下のイラストは一級建築士であり雨水利用の専門家である黒岩哲彦さんが作成した設置イメージです。
タンクタイプ1:建造物併設型
建造物の屋根等で受け止めた雨水をパイプ等で集めて設置したタンクで貯留、利用する。
建造物の形状に合わせて様々組み合わせることが可能。
建造物に併設することで設置コストも抑えることができ、タンクの維持メンテナンスが容易になる。
建造物に併設するため設置スペースの確保が比較的容易であり、個人の住居から公共施設まで幅広く利用形態が見込まれる。
また難民キャンプや現地連絡事務所の設置と同じ作業の中で短期間で備え付けることができる。
100リットル程度から数10トン、数100トンまで可能。
右の写真は屋根裏にタンクを収める工程途中のものです。
タンクタイプ2:単独集水貯留型
単独集水貯留型タンクのメリットはなんと言っても場所を選ばないことである。

建造物の全くない荒地でも、傾斜の険しい岩山でも、災害直後の焼け野原でも、土地の狭い海辺の土地でも、海上でも、汚濁した河川の上でも、タンクを設置することで淡水である雨水を直接貯留、利用することができる。
配管等の設備工事も最小限で大きな効果が短期間で期待できる。
また使用素材も紫外線等にも強い構造となっており耐久性にも優れている。
サイズは100リットル程度から数10トン、連結することで数100トンまで可能。
(特許出願中)
使用エリア1:国内
都市部においては飲料水など水資源への切迫した危機感はほとんどないのが現実ではないか。
それを良しというわけではないが、都市部住民への訴求は「流出抑制」と「災害」対策である。

「流出抑制」とは、一定規模以上の土地建物に降る雨水をそのまま下水等に排出すると災害の原因ともなるため、一時的に貯留することで災害の被害を小さくとどめようという発想に基づくものである。
国土交通省は流域貯留浸透事業の一環として、雨水利用流出抑制に関連する税制措置を設けている。
各自治体ではそれを受ける形で、降雨による水害の防止、軽減ならびに都市環境の向上を図るため、一定面積(概ね500㎡としているケースが多い)以上の敷地に建築物を建設されるときに、浸透桝・浸透地下埋管・透水性舗装・貯留施設等の雨水流出抑制設置を推進している。

例えば、学校校舎や大型公共施設を所有する地方自治体、本社ビルや大型工場、物流センターを所有管理する企業などはこうした公共性を考慮した取組みの重要性を充分に認識しなくてはならない。
この都市部災害の防止方策の有効な手段として雨水タンクがある。

島嶼・山間部においては、災害対策とあわせて慢性的な水不足を解消する方策として位置づけることができる。
国内にあっても、山間部や島嶼においては、充分な水源を確保することが困難な地域が多くある。
地理的に傾斜があるなどの理由で雨水の貯留ができなかった地域では、雨水タンクの設置で、耕作用、飲料用に利用することができる。
また学校施設など非難指定場所に設置することで災害時の飲料水の確保ができる。
使用エリア2:海外
日本国内でも水資源の確保が困難な地域があるが、海外はそれ以上に厳しい状況である。
すでに建物等が建っている場所に短期間で建造物に雨水タンクを併設するとともに、未開発地域には単独集水貯留型タンクを設置していきたい。

「水さえあれば作物をつくることができる。」
そんな地域が発展途上地域にはたくさんある。

雨水農法によって再生したインド・ニーミ村がそうだ。
その最初は雨水を溜める池をつくることだった。

植樹によって森の侵食を防ぎ、帯水力を復元した土地で作物を作り始めたケニア地域がある。
絶望から生きる希望への転換を果たした、その転機はわずかな水と一人の人間の行動だった。

私たちが見習うべき教訓が、そこにある。
私達に求められていること。それは、今できることから始めることだ。
導入事例
タンクの素材は合成樹脂等を標準仕様として、それ以外に設置場所によって木材、石材、耐水コンクリート等、様々な素材で施工を行います。
付帯設備として、配管、ろ過浄化装置や、貯留した水を利用する際に必要となるポンプや蛇口などが含まれて設備一式となります。
雨水タンク設置の導入例を参考に、製品のバリエーションを紹介します。
事例1:ワイン樽の再利用で自宅の庭をコーディネート
これは今まで廃物となっていたワイン樽、オーク樽を庭のエクステリアとしても活かすことができるリサイクルのアイデアです。
最近は落ち着いた感がありますがワインブームの影響もあり、使用後の樽が廃物として出ています。耐水性にも優れたこの樽を天水樽として使用しようというものです。

個人のお宅の庭に設置したり、洋風レストランの玄関脇ディスプレイとして実用的に使っている例がいくつもあります。

庭木への水遣りなどは樽に溜まった雨水のみで年間を通して対応できます。
事例2:業務用トラックの洗車にかかる水道料金を削減する
現在導入されているものの多くは災害時用の用水池としての機能に留まっているものも少なくありません。
降ってくる雨を積極的に利用しようというパターンのひとつが洗浄用利用。
事例は「業務用トラックの洗車」です。
自家用車にも利用できます。

小規模の物流センターや倉庫でも屋根面積は1000m2(平方メートル)以上のものが多くあります。1000m2とは例えば40m×25mです。この屋根の大きさで、どの程度の雨水が集水できるでしょうか。
下記表は東京都内の2002年の月別降水量です。(単位はmm)
季節によって違いが大きいこともわかります。
東京では平均して一ケ月100~250mmの雨が降っています。
1000m2の屋根面積で100,000~250,000リットルの雨水が集水できます。

この規模の物流倉庫で使っている業務用トラックを一回洗車するために必要な水量を平均300リットルとすれば、1ケ月で延べ333~833台分の洗車ができる計算になります。
もちろん季節変動があるのでこの計算値通りにいかないとしても、月300回分以上の水道料金が節減できるメリットは大きいです。
所有または業務委託しているトラック台数が80台程度であれば都心部でも月4回までなら年間を通して全台数分の水が確保できる計算になります。
これを水道料金に換算すると年間50~200万円のコスト削減ができる計算になります。

多くの物流倉庫では、ドックヤードが高床になっていたり、屋根部分の内側に空洞があったりとタンクを設置しやすくメンテナンスしやすいという環境も揃っています。
事例3:自宅にダムを作る
近年、普通の住宅にも雨水を貯めるタンクを設置する人が増えています。
日本は年間を通して雨の恵みを受けることができる恵まれた国。上記の降雨量の表からもわかるとおり、わずか10㎡の屋根面積があれば自家用車の洗車に必要な水が年間を通して確保できる計算となります。
設置方法は簡単です。
雨どい部分から設置したタンクにパイプを引く程度の簡単な工事でOK。ホームセンターで材料を買い揃えて自分で日曜大工の感覚で作ってしまう方も多いようです。

もう一歩進めて、水洗トイレに利用している家庭もあります。
火災時の防火用水や渇水対策として設置を進めている自治体もあり、墨田区や香川県高松市などでは雨水タンクの設置に助成金が出されています。
事例4:山小屋に導入して水不足緩和を図る
山小屋の維持していくためには飲用をはじめとする「水」の確保は不可欠です。
近くに水場があり、必要な飲料水を確保できる小屋もありますが、そうでない小屋での苦労も多く聞きます。
登山口に1~2リットルサイズのペットボトルを置き登山者にボランティアで水を運んでくれるように頼んでいる小屋もあり、山腹の沢や雪渓からポンプを使って汲み上げている小屋もあります。
それでも水が確保できない山小屋では雨水を貯めて消毒して飲料水として使用している例も実際にあります。そこで課題となるのが集水のための工夫です。
きれいなままの雨水をなかなか思うように集められないのが現状です。
私たちの設備では屋根部分の集水で充分であればその部分で無駄なく設計を行って設置します。
しかし屋根部分だけでは必要な水が足りない場合もあります。
その場合は単独集水タンクを使って雨水を確保します。
またそうした設備を使うことで、消毒ではなく、ろ過装置中心で対応することが可能となります。
集水ポイントは山の斜面や道路沿いのU字溝、トイレの屋根など。
雨水を集水して露天風呂、トイレ、調理場に配水することが可能です。
地面に穴を掘り貯水槽を作る方法も広まってきています。
貯水槽は既存の素材を組み合わせて作ることができ、約10トンの貯水ができる大きさ程度で充分実用に対応できます。
実にローコストで自分達で自作もできる規模です。

こうした地下の貯水槽が作りにくい地域もあります。
その際は単独集水貯留型を置く方法を検討すべきケースも多いと考えています。

また山での導入では集水システムとあわせて排水や汚水を処理するシステムが重要となります。

今年(2003年)4月に自然公園法が改正され、NGOなどの民間法人が環境庁の認可を受けて管理団体として自然公園を管理することが可能となりました。
自然破壊の一因となっている屎尿処理については早急に改善されていることが望まれています。
1999年には山小屋などのトイレ整備にかかる費用の半額を環境庁が補助する制度がスタートしており、今回の自然公園法の改正とあわせて改善が一段と進むものと思われます。

3~4つに分けられた処理槽を順々に通過させることで汚水を分解処理し、最終段階で嫌気性のバクテリアを利用して分解する方法等が一般的になっています。
電力や動力などが不要のシステムです。
ただし冬季はバクテリアが休眠するので最終処理が行われないため別途、処理槽を用意しておくケースが多いです。
ドラム缶状の処理槽内におがくずを入れて保温加湿して堆肥化するシステムも有効です。
トイレの汚物を処理するためには水洗が必要という固定概念を打ち破る特筆すべき事例でしょう。
大便に含まれる腸内バクテリアを活性化させて発酵分解を促進、余分な水分は発酵熱やヒーター熱によって蒸発。ヒーターの電源が必要となりますが、地域条件によって太陽光発電(ソーラーパネル)や風力発電によって確保することによって自己完結型の処理装置とすることができます。
私たちのプロジェクトでも、山小屋への導入時には、排水蒸発を行わせる設備を提供します。
( 2002.12 )

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