今月の本: |
『泥の河』(宮本輝) |
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実施日時: |
2013年1月26日(土)14:00〜17:00 |
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今月の会場: |
勤労福祉会館 和室(小)
西武池袋線大泉学園駅・徒歩3分 |
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参加費 : |
350円(会場費・資料コピー代に補填します) |
懇親会 : |
終了後希望者で懇親会を行います(会費2500円程度) |
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今月取り上げる本は宮本輝作『泥の河』です。
昭和30年、夏の大阪。
土佐堀川と堂島川が合流して安治川(あじかわ)となって大阪湾に流れ込む。3本の橋が架かるその合流地点あたりが物語の舞台です。
うどん屋のやなぎ食堂を経営する両親のもとで暮らす信雄。小学2年生で少し引っ込み思案の性格の少年が主人公である。
お店の常連客のおじさんが自分の馬と荷車に引かれて死んだ現場で数日後にある少年と出会う。
名前は松本喜一。親しくなった二人は、きっちゃん、のぶちゃんと呼びあうようになる。
喜一は母と姉・銀子と3人で船で暮らしていて、橋のたもとに船を移動してきたばかり。父は戦争で負った傷が元で骨髄炎で死んでいた。
喜一少年と友達になったことを両親に告げる信雄。「夜はあの船に行ったらあかんで」と告げる父。食堂に来た姉弟を温かくもてなす両親。姉弟も食堂に遊びに来るようになる。
少年達が心待ちにしていた天神祭りの夜。信雄の母親が喘息の発作を起こしたため、信雄と喜一は二人で祭りに出かける。
はじめてもらったお小遣いを落としてしまった信雄達は露天の男に罵倒され、喜一は露店のおもちゃを盗んでしまう。それは泥棒だと非難する信雄の機嫌をなんとか取り戻そうとする喜一は、蟹の巣を見せると言って自分の郭舟に信雄を連れてくる。
何もない船内で信雄を喜ばせようと喜一がとった行動とは...。
そして、その舟のベニヤ板の向こうで何が行われているかを知ってしまう信雄。
祭りから十日ほど後、信雄の家族は慌ただしく新潟への引越しを決める。
引越しを翌日に控えた日。喜一たち家族の舟は別の場所へ移動していく。
祭りの後一度も会っていなかった信雄は、その舟を追いかける。
舟を追うように現れたお化け鯉。
自分達の引越しのことも忘れて、お化け鯉を知らせようとする信雄。
しかし舟からは返答もなく、信雄の声だけが虚しく響いていた...。
小栗康平初監督作品として、映像でこの作品に出会った方も少なからずおられると思います。モノクロで表現された映像は多くの人々に郷愁と哀しい感動を与えました。
まだ私の世代が生まれる前の時代。
日本人が今よりもずっと貧しく、けれど力強く生きていた時代。
生きるとは何かを問いかけてくる本作品は、第13回太宰治賞も受賞しています。
※現在購入可能な文庫本には『蛍川』『道頓堀川』と共に「川三部作」として収録されています。
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